マテリアル インテグレーション 2001年6月号
特集 ナイトライドセラミックスの新展開(1)


“特集号のねらい”

 久しぶりに超伝導ヒーバーである.酸化物高温超伝導体が発見されてから10数年が過ぎたが,銅酸化物系以外でNb3Snを超えるTcをもつ化合物MgB2が青山学院大学の秋光純教授らによって今年の始めに報告されたからである.3月の日本物理学会では1000名を超える人が集まったというからまさに第2の超伝導ヒーバーと言えよう.どこにでもありそうなホウ化物に宝が隠されていたのである.本年の3月号のNatureに論文が発表されるや世界中で大騒ぎになり,あっという間に数十件以上の論文が発表されている.宝物はどこにあるか分からないことを示した一例とも言えよう.

 さて,本特集はナイトライドである.ナイトライドセラミックスについては数年前に日刊工業新聞社から成書を出版したが,その後の進歩が顕著なため,ここに改めて特集を組むことになった.最近のナイトライドをおもしろくした筆頭はなんと言ってもGaNであろう.特に発光材料として脚光を浴びてきた.GaN系発光材料が注目されたのはInNとGaNから成るInxGa1-xN混晶半導体の登場によってである.1993年に日亜化学がInGaN:Si,Znを活性層としたダブルヘテロ構造をもつ青色発光ダイオード(LED)の商品化に成功し,その後,量子井戸構造を用いた高効率レーザーダイオードを実用化したからである.当初発光ダイオードの発光効率は5 lm/W程度であったが,現在では15 lm/Wにまで達し,一般家庭の白熱電球レベル迄になった.次世代の光源として大いに期待されてよいだろう.GaNは発光材料としてばかりでなく,火災センサなどへの応用も検討されており今後の発展がますます期待される.

 本特集ではGaN以外にも半導体装置材料として急速に生産量が増えているAlNやこれから開発が期待されるCrN, TiN, MoNなどについても述べられている.  冒頭にも述べたように,MgB2で新しい宝物が見つかったが,ナイトライドにも宝物は隠されている筈である.最近の環境問題などを考えればナイトライドは地球にやさしい材料であり魅力一杯と言ってよいだろう.是非本特集を通してナイトライドファミリーが増えることを願っている.