『いまセリウムがおもしろい』
2005年1月 発行
B5版 約200頁
定価 26,000円(税別・送料別)



■刊行主旨■

 セリウムは、発見されたのが1803年と古いにも関わらず、近年セリウム固有の性質を利用した新しい材料が次々と開発されており、その用途は研磨材、紫外線遮断剤、自動車触媒をはじめとして非常に多岐にわたっています。
 酸化セリウム、あるいは酸化セリウムを含む複合酸化物においては、その合成法が生成相、粒子サイズ、表面積、触媒活性などに大きく影響を及ぼすことから、調整方法や表面改質に関する研究が数多くなされています。本書は、月刊「マテリアルインテグレーション」に掲載されたセリウムに関する記事を系統的に再構成し、酸化セリウムを基本とする材料の主な合成法や改質法から応用例までを1冊にまとめたものです。

Contents

第1章 合成法

第1節 セリウム系セラミックス
(東京工業大学 応用セラミックス研究所 助教授 垣花 眞人)
1 はじめに
2 酸化セリウム及び二価金属又は希土類酸化物固溶体
 2.1 酸化セリウム
 2.2 酸化セリウム・希土類酸化物固溶体
3 酸化セリウム・酸化ジルコニウム固溶体
 3.1 固溶体における均一性および固相法
 3.2 溶液法によるCoxZr1-xO2固溶体の合成
4 ナノコンポジット
5 おわりに

第2節 酸化セリウムをベースとする材料の合成
(大阪大学大学院 工学研究科 増井 敏行 ほか)
1 はじめに
2 固相反応法
 2.1 セラミック法
 2.2 ボールミル法
3 液相反応法
 3.1 前駆体法
 3.2 沈殿法・共沈法
 3.3 水熱法
 3.4 アルコキシド法
 3.5 界面活性剤法
 3.6 エマルション法
 3.7 噴霧熱分解法
4 気相反応法
 4.1 ガス中蒸発法
 4.2 化学気相析出法
5 おわりに

第3節 気相合成法によるナノ構造を有するセリアの合成
(大阪大学 産業科学研究所 教授 新原 晧一 ほか)
1 はじめに
2 気相合成法とは
3 ナノ結晶体における電気特性
4 ナノ粒子における光学特性
5 ナノ薄膜における触媒特性
6 シングルナノレベル複合粒子における触媒特性
7 おわりに

第4節 水熱法によるセリア−ジルコニア固溶体の合成
(愛知工業大学 工学部 応用化学科 平野 正典)
1 はじめに
2 加水分解法の適用
3 ナノサイズ固溶体粒子の直接合成
4 実用化のための技術的課題
5 おわりに

第5節 セリア−ジルコニア系状態図と固溶体
(東京工業大学大学院 総合理工学研究科 八島 正和)
1 はじめに
2 CeO2−ZrO2系における生成相,結晶構造と相転移
3 CeO2−ZrO2系平衡状態図
4 組成が均一なCeO2−ZrO2固溶体の相図
5 CeO2−ZrO2系固溶体の相安定性と自由エネルギー曲線
6 まとめと補足


第2章 固体電解質としてのセリウム化合物とその応用

第1節 固体電解質としてのセリウム化合物
(大阪大学大学院工学研究科 講師 小俣 孝久)
1 はじめに
2 セリア(CeO2)系酸化物イオン伝導体
3 ペロブスカイト型プロトン(H+)伝導体
4 新しい固体電解質
5 おわりに

第2節 酸化物イオン伝導体
(九州大学大学院 総合理工学研究院 佐々木 一成 ほか)
1 はじめに
2 各種酸化物イオン伝導体
 2.1 ZrO2(ジルコニア)系イオン伝導体
 2.2 CeO2(セリア)系イオン伝導体
 2.3 LaGaO3(ランタンガレート)系イオン伝導体
 2.4 Bi2O3(酸化ビスマス)系イオン伝導体
 2.5 Pyrochlore(パイロクロア)型酸化物
 2.6 Brownmillerite(ブラウンミラーナイト)型酸化物
 2.7 C型希土類酸化物
3 粒界効果
4 表面効果
5 おわりに

第3節 酸化物イオン伝導体の燃料電池への応用
((独)産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 堀田 照久 ほか)
1 はじめに
2 SOFC用電解質としての必要条件
3 電解質中の電子・ホール伝導度と効率
4 SOFC用電解質としてのCeO2系酸化物の適用と電極反応
5 まとめ


第3章 自動車触媒

第1節 自動車触媒
(名古屋工業大学 セラミックス基盤工学研究センター 小澤 正邦)
1 はじめに
2 自動車の触媒 −環境保全技術の決め手−
 2.1 自動車と排ガス
 2.2 浄化システムを制する希土類
3 セリウム酸化物の登場 −酸素ストレージ能−
 3.1 助ける触媒
 3.2 女神セレス(セリウム)の役目
4 高性能セリウム複合酸化物の作用メカニズム
 4.1 セリウム酸化物のレドックス反応
 4.2 非化学量論性OSC
 4.3 OSC向上 −ジルコニウムの複合化−
5 セリウム系触媒のニュートレンドと将来
6 おわりに

第2節 自動車触媒用酸素貯蔵材料の歴史 −セリア-ジルコニア固溶体(CZ)の進歩−
((株)豊田中央研究所 材料分野統括室 主監 杉浦 正洽)
1 はじめに
 1.1 自動車触媒の根本原理
 1.2 酸素貯蔵材料の必要性
 1.3 初期のセリアを主成分とする酸化物
2 セリア-ジルコニア固溶体(CZ)の開発
 2.1 第1世代CZ
 2.2 第2世代CZと第3世代CZの開発
3 セリア−ジルコニア固溶体に関する最近のトピックス
 3.1 セリア−ジルコニアミックス酸化物(CZ)およびPt/CZ触媒の調製と構造解析
 3.2 OSC測定
 3.3 セリア−ジルコニアミックス酸化物のOSCに及ぼす構造依存性
 3.4 全OSCの比表面積依存性
 3.5 OSCにおけるPtの役割
 3.6 パーシャルOSCの温度依存性
4 まとめ

第3節 還元したセリアジルコニア固溶体の室温酸化挙動
((株)豊田中央研究所 第33研究領域 研究員 佐々木 厳 ほか)
1 はじめに
2 CeO2-ZrO2固溶体の還元処理
 2.1 結晶構造変化
 2.2 酸素放出量
 2.3 比表面積
3 還元体の室温における酸化挙動
 3.1 還元したセリアジルコニア発熱酸化挙動
 3.2 緩やかな室温酸化挙動
4 おわりに

第4節 Pt/セリア−ジルコニア触媒のミリ秒スケール酸素放出挙動解析
((株)豊田中央研究所 第31研究領域 坂本 淑幸 ほか)
1 はじめに
2 高速触媒反応解析技術の紹介
 2.1 過度反応解析
 2.2 高速触媒反応解析技術の開発
3 酸素放出挙動解析
 3.1 酸素放出速度の測定
 3.2 MS-OSCの要因解析
4 まとめ

第5節 セリア−ジルコニア助触媒の微細構造とシンタリング
(名古屋工業大学 セラミックス基盤工学研究センター 小澤 正邦)
1 はじめに −高性能自動車触媒とともに−
2 自動車触媒のシンタリング現象
3 アルミナ担持セリア−ジルコニア助触媒のシンタリング
4 フラクタルシンタリングとセリア添加ジルコニア微粒子
5 おわりに −セラミックスと触媒−

第6節 セリア−ジルコニア固溶体の酸素貯蔵放出挙動と構造解析
((株)豊田中央研究所 第31研究領域 長井 康貴 ほか)
1 はじめに
2 酸素貯蔵放出材CeO2-ZrO2の開発
3 触媒調製
4 酸素吸放出挙動の解析
 4.1 実験方法
 4.2 酸素貯蔵放出挙動
 4.3 酸素貯蔵放出挙動のまとめ
5 XRDによるCZの構造解析
6 CeO2-ZrO2のXAFSによる構造解析
 6.1 Ce K-edgeおよびK-edge EXAFSのフーリエ変換
 6.2 Zr K-edge XANESスペクトル
 6.3 CeO2-ZrO2中のCe/Zr固溶状態
 6.4 CeおよびZr周りの酸素の配位環境
 6.5 構造とOSCとの関係
7 おわりに

第7節 ケミカルファイリング法によるセリア−ジルコニア固溶体の表面改質と酸化還元挙動の解析
(大阪大学大学院 工学研究科 教授 今中 信人 ほか)
1 はじめに
2 排ガス規制の強化と最近の開発動向
3 ケミカルファイリングによる表面の改質と酸化還元挙動の変化
4 おわりに


第4章 広い分野で活躍するセリウム

第1節 希土類添加酸化物を用いた蓄光材料の長残光メカニズム
(岐阜大学 工学部 教授 山家 光男 ほか)
1 はじめに
2 発光中心Ce3+およびEu2+の光吸収と発光
3 いろいろな蓄光材料と残光特性
4 長残光メカニズム
5 まとめ

第2節 セリウムのバイオサイエンスへの応用
(東京大学大学院 工学系研究科 化学生命工学専攻 須磨岡 淳)
1 はじめに
2 セリウム(W)によるDNAの加水分解
3 セリウム(W)溶液の均一化
4 人工制限酵素の構築
4.1 セリウム(W)の固定化
4.2 セリウム(W)−EDTAによるDNAの構造を利用した選択的切断−
5 おわりに

第3節 酸化セリウムを用いた化粧品用紫外線遮断剤の開発
((株)コーセー 製品研究所 矢部 信良 ほか)
1 はじめに
2 酸化セリウムの紫外線遮断剤としての利用
 2.1 複合化
 2.2 微粒子化
3 金属固溶酸化セリウム
 3.1 粒子形状
 3.2 参加触媒活性評価
 3.3 光触媒活性
 3.4 光学的特性評価
4 おわりに

第4節 セリウム試薬を用いる有機合成反応
(塩野義製薬 生産技術研究所 製薬研究部 隅野 幸仁 ほか)
1 はじめに
2 有機合成化学における利用
 2.1 4価セリウムを用いた酸化反応
 2.2 有機セリウム反応剤を用いる炭素 −炭素結合生成反応−
 2.3 低原子価セリウムによる還元反応
 2.4 CeCl3-NaBH4試薬による還元反応
3 おわりに